コラム
- メディカルツーリズム(1)
- 「不妊」について(5)
- 人生の選択肢(1)
- 不妊治療(1)
- 妊娠・出産の適齢期(1)
- 赤ちゃんを授かるための選択肢(1)
- 医療機関(1)
- 日本と世界の違い(3)
- 「妊娠しよう」と考えた時に(2)
- 不妊大国ニッポン(1)
- 妊娠力と出産力(1)
- 妊娠を望む方へ(1)
「不妊」について
男性不妊(1)
日本では、男性の不妊に対する意識が欧米の先進国に比べて低いと言われています。「妊娠を望んでいるのになかなか妊娠しない」という悩みを抱えているご夫婦の中には、「精子」に問題があることに気付かず、ご主人側の検査を全く行わずに悩んでおられる女性も大変多いようです。 「妊娠しないのは女性のせい」とばかり思い込んでいる人が多く、女性ばかりが治療や検診に足を運び、「ご主人が全く検査を受けていない」というケースがまだ多いことに驚かされます。
実際は、子供が出来ない原因の約半分のケースに、男性が関わっているのです。日本では男性の理解がまだ十分ではないようですが、男性不妊の原因には、「乏精子症」、「無精子症」、「精子無力症」、「勃起障害」・・・等があり、これらの名称自体が男性の心にぐさりと刺さるような印象です。
でも不妊治療を考える時には、男性側の問題から目をそらしてはいけません。
また卵子が「ある」だけでは、即妊娠につながらないのと同様に、精子についても「ある」と考えられている(つまり射精できている)だけでは、妊娠につながらないことが多々あります。どういうことかというと、精子は存在するだけでは駄目で、ある一定数の精子があり、一定の形状を持った精子でなければならず、またある一定の運動率を示していなければ、自然に卵子に到達し、受精することができないという事実です。精子や精子が作られるメカニズム、男性不妊の原因となる病気についても是非勉強して下さい。
次に原因が特定できれば適切で効果的な対策を取ることが出来ます。不妊に悩む方は、まず夫婦揃って専門医に相談をしましょう。男性にとって病院や専門クリニックは非常に行き難いところのようです。まずは、奥さんと一緒に産婦人科を受診することが一番手軽です。精液検査をしてもらって、結果が思わしくなければ、「男性不妊外来」のある施設を紹介してもらいましょう。しかし、男性不妊の専門医の数は非常に少ないのが現実です。日本生殖医学会に登録している専門医は、僅か50人ほどという数字には驚きです。しかもそのうちの多くの医師は、一般泌尿器を担当しながら男性不妊を診ているそうです。女性の不妊治療では、日本は世界のトップクラスの水準にあるそうですが、男性不妊ではまだまだはるかに後れを取っています。日本では生殖医療を産婦人科医が行うため、男性側の診察をいっさい行わずに、すぐに体外受精や顕微授精が行われてしまうケースも多いそうです。これは大きな問題です。男性に原因があるにも拘らず、女性だけがズルズルと不妊治療を受け続けて時間だけが過ぎて行く、というようなことは避けたいものです。
男性不妊の専門医の先生の話を聞いても、男性が持っている不妊の原因に関する知識は乏しいようです。男性側に不妊の原因がある場合、その原因が特定されればかなりの確率で妊娠という結果が期待できる対処法が存在しています。原因によっては、体外受精や顕微授精が本当に効果的だと言えます。
卵子が加齢により老化するのと同じように、精巣や精子も加齢により変化することは想像に難くありません。しかし精子成熟過程の詳細な内容はまだ解明されていません。そこに問題があることは事実です。精子の数や活動性の減少はストレスなどに影響されるとよく言われています。それも根拠のない話ではありません。専門家に診察してもらうことにより不必要なストレスから解放されることも多いと思います。
数年前に、トマトの赤の色素であるリコピンが精子運動率の改善に効果があるという研究発表がありました。そこで、トマトジュースを継続的に摂取すると精子に何らかの良い効果がもたらされる可能性があります。日常生活の中でのささやかな試みとして試されては如何でしょうか。
男性不妊の治療を経てお子さんを授かった作家、ヒキタクニオさんがその不妊治療の軌跡を「ヒキタさん!ご懐妊ですよ」という本にしています。
ここまで率直に不妊治療の経験を描いた本は初めてと言われています。「ご主人が不妊治療に協力しないから説得して欲しい」という女友達のリクエストに応えて書き始めたそうですので、ご主人の理解を得られずに悩んでいる方には力強い味方になるのではないでしょうか。ヒキタさんが言っています。男にとって大変なのは、子どもができたときの楽しみを知らないままに、不妊治療の苦難に立ち向かわないといけないこと。実際に子供が産まれれば、男にも「子どもはかわいい、こいつのためにものすごく働いてやろう」という気持ちがでてくる。でも実際に産まれない限り、その気持ちは出てこない。そこが女性とは違うところ。だから世の中に対して、「子どもがいるとこんなに楽しいだ」ということを伝えていくことも大切だと思います。