コラム
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妊娠力と出産力
妊娠力と出産力
妊娠できる身体かどうか、ということを考える時、まず改めてきちんと把握しておきたいのが、「月経」、つまり毎月の生理のことです。「なぁんだ、当たり前のことじゃない」と思われるかもしれませんが、この生理が大変重要な鍵を握っています。
まずは、月経について以下の項目と自分の生理について確認してみて下さい。そして、その中で自分なりに自己診断を行い、「問題がない」と判断しても、あとに述べるような検診を受けたことが無い場合は、一度受けてみて、あなた個人の「妊娠・出産力」を確認しておくべきでしょう。
・月経の有無
・月経周期
・月経痛と出血量
これらのそれぞれについて、詳しくみてみましょう。
たいていの女性は10代前半で初潮を迎えます。生理は煩わしいものかもしれませんが、「生理がある」ということ、更には「生理周期の長さ」などは、卵巣や子宮の機能の状態を知るために大変重要なことです。健康な機能を持っている卵巣と子宮がある場合、卵巣の中にその月経周期で一つのグループの「アントラル卵胞」が現れます。1回の月経周期につき、健康な卵巣内では、アントラル卵胞は8~20個程度見られることが多く、その後、その中で一番大きく成熟した卵子が排出(排卵)され、その時に精子による受精がなければ、後日生理出血が起こります。これはどうしてかというと、排卵の頃に向けて、身体の複雑かつ精巧なメカニズムが「妊娠の用意をするために、子宮の中を妊娠しやすいように準備するように」という指令を出すのです。そうすると、卵巣からの分泌ホルモンであるエストロゲンが発射され、その働きによって子宮内膜が厚くなってゆきます。しかし、排卵はしたものの受精が起こらず、この月経周期では子宮内膜を厚くしておく必要がなくなると、身体のメカニズムにより、今度は不要となった子宮内膜が自然に剥がれ落ちます。 これが生理出血です。生理がある、ということで、「卵巣が何らかのレベルで機能している」という事実と、「子宮があり、子宮内膜ができていた」という2つの事実が分かります。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、実はこの2つが妊娠するにあたって非常に重要な要素なのです。つまり、妊娠が成立する3要素のうち、卵巣と子宮という2つの要素について情報を得ることができるわけです。「生理があるから妊娠できる」という言い方は、必ずしも真実ではありませんが、まずは「妊娠・出産力」を考えるにあたっての第一ステップとなることは言うまでもありません。
16才を過ぎても生理が始まっていない場合は、直ぐに専門医による診断を受けて下さい。初潮が単に遅れている場合もありますし、ホルモンのバランスが悪いだけの場合もありますが、稀に診断されるべき疾患が隠されている場合もあります。ターナー症候群、あるいはターナー症候群のモザイク型であることによって、卵巣機能が働いていない、といった卵巣機能の発達の問題、あるいはロキタンスキー症候群という子宮欠損症だったり、子宮の発育が進んでいない、といった子宮の問題である場合もあります。
ホルモン異常が認められる場合はホルモン療法で対応したり、膣や処女膜閉鎖や子宮奇形などの診断があった場合には、手術で対応することになるかもしれません。どんな症状でも、早目に診断を受け、対処することが肝心です。
また10代で生理がいったん開始したのに、その後、一般の更年期の年齢層に達していないのにまた止まってしまったという場合も、煩わしい生理がなくて楽だ、とは考えずに、すぐに専門医に診てもらいましょう。あるべき生理がないということは、何かがうまく機能していないという証拠ですから、ストレスや過度のダイエットによる体重の変化などが原因である場合は、ライフスタイルを改善したり、ちょっとしたホルモン治療を行うことで問題を正すことも可能かもしれません。
早期閉経等の診断を受けた場合で、将来の妊娠・出産を考えるならば、卵子提供プログラムが視野に入ってきます。
また子宮欠損症や重度の子宮奇形が見つかった場合は、代理出産プログラムが視野に入ってきます。
卵巣・子宮両方にそのような診断がされた場合にはドナー卵子+代理出産という選択肢が存在します。
月経周期というのは、生理出血が開始した日を周期の第1日目として、次の生理が開始する前日までの日数をいいます。生理出血が終わった翌日から次の生理出血が始まる前の日までと、勘違いされている方がおられるので、再確認して下さい。月経周期の標準は、大体28日前後と考えられています。大雑把にいって、そのちょうど中間あたりで排卵が起こると考えられます。排卵が起こるあたりが、子宮内膜が一番厚くなっていると考えられる頃です。月経周期には個人差があり、25日~38日の間であれば正常範囲とされているので、25日未満、あるいは38日を超える場合には、排卵機能に何らかの問題がある場合があるため、専門医の診断を受けるべきです。初潮を迎えた後の数年や、閉経が近づいてくる頃には周期がばらついてくることが多くあるようです。それ以外の年齢層であるにも拘わらず生理不順が著しいようでしたら、専門医の診断を受けてみるのが良いでしょう。
月経周期がいつも短い場合で、基礎体温表の高温期と呼ばれる排卵から次の生理出血までの期間が短い場合は、黄体機能不全といって妊娠しにくい可能性もありますので医師の診断を仰ぎましょう。基礎体温表でいう低温期、つまり生理出血の開始から排卵までの期間が短いのは、更年期によく見られます。
月経周期が長すぎる場合は、卵巣機能の低下がある場合もあり、なかなか排卵しない、あるいは排卵していない、という状況になっているかもしれません。更には、初潮が10代の終わり頃と遅く、かつ年齢がまだ20代なのに月経周期が長いといった場合は、多嚢胞性卵巣症候群である可能性もあります。いずれにしても専門医に相談することが肝要です。
月経周期にバラつきがあり、短くなったり長くなったりが極端な場合も、卵巣が正常に機能していない可能性がありますので、専門医に相談しましょう。
生理痛は、残念ながら、多かれ少なかれ、どうしても付き物の不快な症状です。なんの疾患がなくても、毎回ひどい生理痛に悩まされている女性は多いものです。生理になると立ち上がれない、必ず学校や仕事を休まなければならない、というほどひどい痛みがある場合は、念のため専門医の診断を受けることをお勧めします。特に診断が無い場合も多いのですが、場合によっては子宮内膜症や子宮筋腫などが見つかることもあるかもしれません。
卵巣は2つあります。自分自身の身体のことなのに、卵巣やら子宮やら、ということについては何となく恥ずかしくて、保健の教科書に出ている図解などをサラッと見ただけ、という女性も多いと思います。よくあることなのですが、女性の体の中には、卵巣が左右に2つある、ということを不妊治療するまで知らなかった、という方が意外と多いのです。毎回の生理で、排卵は、右と左の卵巣のどちらかから交互に行われます。理想的には、もちろん両方の卵巣が健康で正常な卵巣であることです。両方が正常でなくても、どちらか1つが機能していれば妊娠の可能性は残されています。生理の時、あるいは排卵の時期に下腹部痛がある場合、右側寄り、左側寄り、と痛みがどちらかに偏っている場合は、それを医師に伝えて下さい。それから、教科書で図解を見ても、具体的にどのあたりに卵巣があるのか、というのは意外につかめませんよね。卵巣は膣の奥に近い当たりの左右にあります。痛みがある時は、背中の痛みのように感じる方も居られます。こういった具体的な痛みについても、気づいたことは医師に伝えましょう。出血量についても、立ち眩みや眩暈がするほど大量の出血がある場合も、専門医を受診した方が好いでしょう。我慢できないような痛みが伴っている場合はなおさらです。何の疾患もないのにそういう症状が出る方も居られますが、念のため、子宮内膜症や子宮筋腫などの問題がないかどうかを、専門医に診てもらいましょう。