コラム

赤ちゃんを授かるための選択肢

赤ちゃんを授かるための選択肢

一般的には、健康で妊娠適齢期の女性の場合、避妊を止め排卵のタイミングに丁度合えば、1年ほどで妊娠すると言われています。このような自然妊娠の確率は7080%になります。ここでいうところの妊娠適齢期とは、32歳ぐらいまでの女性のことで、この自然妊娠率にもっとも影響を与えるのは年齢です。つまり卵子の年齢が自然妊娠率を左右してるとも言えます。
女性の社会進出が進み、結婚する年齢が上がることで、不妊の原因の第一は、卵子の老化となっています。これは、日本だけでなく多くの先進国で問題となっている少子化の原因にも繋がっています。

自然に妊娠できなかった場合、妊娠適齢期の方なら誰でもすぐにできる赤ちゃんを授かる方法は、タイミング法です。妊娠適齢期の女性なら、「基礎体温の測定」や「排卵検査キット」で排卵時期を把握し、タイミングよく性交渉を行えば、80%ほどの確率で妊娠することが可能です。これがタイミング法と言われている計画妊娠です。月経周期が28日の場合、月経開始日からおよそ14日目に排卵が起こります。しかし月経周期がほぼ安定している人でも、その時の体調などにより決まった間隔で起こるわけではありません。また排卵された卵子が受精できる時間は限られているため、妊娠の確率を高めるために排卵時期を予測することが必要になってきます。自然妊娠やタイミング法を試みても1年以上妊娠できなかった場合や、すでに妊娠適齢期を過ぎている場合、特に40歳を過ぎている場合は、すぐにご夫婦で産婦人科や不妊治療専門医を受診して下さい。近年、不妊の原因の約40%が男性側にあると言われており、必ずご夫婦で検査を受けることをお勧めします。

自然妊娠そして計画妊娠にトライされて1年以上妊娠できなかった場合や、すでに妊娠適齢期を過ぎている場合でも、生殖補助医療がすぐに必要という事ではなく、ご夫婦で検査を受け、疾患が見つかった場合は、その治療を行う事で妊娠することもあります。検査では、ホルモンの乱れ、子宮内膜症、子宮筋腫が見つかることもあり、治療や手術を行う必要があれば、すぐに進めて下さい。
また近年では、ストレス等の影響で、妊娠できないご夫婦の内、約40%が男性側に問題があるとの結果が出ています。精子の検査で、無精子症、精子の運動率や奇形などの異常が見つかることも多々あります。
女性の社会進出すすみ、結婚する年齢が上がることで、不妊の原因となるのは、女性の年齢、つまり卵子の老化が大きく影響していると言われています。
検査後の疾患の治療、その後の生殖補助医療への取り組みが大事になってきます。

生殖補助医療技術の1つである人工授精(AIH)とは、洗浄濃縮した選りすぐりの精子を、排卵のタイミングで女性の膣内から注入する不妊治療です。この人工授精には、基礎体温などで排卵のタイミングを見て行う場合と、より積極的に排卵誘発剤などを使い、卵胞の発育状態を確認しながら、排卵のタイミングを薬剤でコントロールしながら行う場合の2通りがあります。
人工授精の利点としては、使用する薬剤を最小限に抑えることができるため、体への負担が少なく、費用も比較的安価に抑えることができます。反面考慮点としては、受精卵の数のコントロールができないため、多胎妊娠の危険性があります。
また第三者の精子ドナーから精子の提供を受けて行う人工授精(AID)もあります。これは、男性側が無精子症などの場合に行われます。しかし顕微授精が増えるのに従い、この方法は減少しています。

生殖補助医療(ART)と呼ばれる技術の一つに体外受精があります。体外受精の歴史は長く、1978年世界初の体外受精そして胚移植による妊娠・分娩の成功以来約40年間になり、現在では約18人に1人の新生児が体外受精で誕生した計算になります。女性の卵巣から採取した卵子と男性から採取した精子を培養液の中で混ぜ合わせ、女性の体内で起こっていた受精を体外で行い、できた受精卵を子宮に移植する医療技術です。
体外受精の利点としては、卵子や受精卵の状態を詳細に管理できるため、妊娠率が高くなることです。一方で、排卵誘発剤などの薬剤の投与や採卵などで女性の体への負担が大きくなり、同時に医療費も高くなります。しかし晩婚化を背景に不妊に悩む夫婦が増える中、治療費の一部公費負担制度を利用して治療を受ける人が増加しています。
尚、体外受精は、「婚姻している夫婦に限る」との日本産婦人科学会の指針により、日本国内ではドナーからの精子や卵子の提供による体外受精はできません。

生殖補助医療の中から、日本でできる最後の選択肢として、顕微授精を取り上げます。顕微授精は、男性不妊に対応するために開発された画期的な治療法で、体外受精の一つです。
精子に何かしらの異常がある、たとえば数が少ない、奇形が多い、運動率が低いなどの場合、通常の体外受精では、受精まで至らないことが多く、その解決策としてできたのが顕微授精です。正常な精子を1つ、成熟した卵子内に挿入する事で受精させる医療技術のことです。
最近では、精子に問題がない場合でも、受精率を高めるため用いられることもあります。またさらに妊娠率を高めるため、できた胚を一度凍結し、着床しやすいように子宮の状態を整えてから移植を行う、凍結胚移植との組み合わせも増えてきました。顕微授精の利点としては、精子検査の数値が悪い場合であっても、受精に至る確率が高まります。一方で、胚培養士の技術に依存することが多く、費用も高額になります。

顕微授精は、本来は男性不妊のために開発された技術であると書きましたが、重症の男性不妊の場合行われる精巣上体精子回収法(MESA)と精巣精子回収法(TESE)があります。これは、射精できない(射精障害)または無精子症(射精後の精液に精子が見つからない)の場合に、直接睾丸から精子を採取する方法として開発された生殖補助医療技術です。
男性から精巣上体精子回収法や精巣精子回収法で精子を採取し、同時に女性の卵巣から卵子を採取するといった一連の流れの中で、得られた精子と卵子で顕微授精を行い、その後子宮の状態を整え、得られた受精卵を胚移植することで妊娠を目指す方法です。しかしMESATESEが必要なケースでは、受精可能な精子が採取できなかったり、採取できても正常な精子の数が少なかったりすることも十分考えられます。この方法の利点としては、直接睾丸から行うことで、精子を採取できる可能性が高まることです。一方で、最新の医療技術に依存するため、費用は高額になります。

不妊の原因で、このような男性側のみにある場合が2025%、男性と女性の両者にある場合は同じく2025%、したがって全体の約半数が男性側に何かしらの原因があるという事になります。一方女性側のみにある場合は、約40%と言われています。お子さんができない原因にはいろいろあります。はっきりした原因がある場合は、これに対応する必要がありますが、原因がはっきりしない場合も多数あります。その多くの場合、年齢が高いというだけで、はっきりした原因がわからないことも事実です。具体的な不妊の原因には、排卵障害、卵管障害、着床障害などの女性側の原因と、男性側の障害があります。夫婦共に問題がなく、タイミング指導から人工授精まで行っても妊娠に至らない場合は、機能性不妊と定義づけられます。簡単に言い変えれば、原因不明の状態の事です。
治療のステップアップとして体外受精そして顕微授精と書いてきましたが、ご夫婦の年齢が40歳以上の場合、次の一歩も視野に入れる必要があります。日本の生殖医療は世界水準と言えますが、まだ国内では制限されたり、許可されていない治療手段が海外にはあり、それらも赤ちゃんを授かるための選択肢です。

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