コラム

妊娠を望む方へ

年代別、妊娠を望む方へ

10代後半は生物学的には最高の妊娠適齢期ですが、社会的適齢期、つまり精神的あるいは経済的にはちょっと無理があるかもしれません。
まだ学生の方も多く、親から独立していない場合も多い年代ですから、子供を責任もって育てる意思がないのなら、避妊が絶対条件です。1回だけだったのに妊娠、ということがこの年代には大いにあり得ます。望まない妊娠の場合、中絶するケースが極めて多いと思いますが、もし望まない妊娠をしてしまって、中絶が必要になってしまったら、きちんとした医療施設で丁寧な中絶手術を受けましょう。この掻把術が上手く行われていない場合、子宮に癒着(傷)が残ることがあり、それが原因で後に子宮内膜が育たない、というような問題に発展することもあります。術後もきちんと医師の指示に従うことが肝要です。何度も中絶を繰り返すと、きちんとした手術を受けていても子宮内に癒着が残る可能性が出てくるので、妊娠を望まないなら避妊が不可欠です。

20代は、21世紀のライフスタイルの中でも、社会的妊娠適齢期としても最適で、生物学上でも素晴らしい結果を出せる妊娠適齢期です。
現在でも、日本では20代後半で初産というケースが極めて多いのです。まだまだ卵子の生殖力は高いので、基本的には安心していてよい時期です。ひと昔前に言われていた「25才はお肌の曲がり角」とか、「クリスマスケーキ(25日を過ぎると値が下がるという意味)」のような、今では死語になっている意地悪な言い回しの中に、実は生物学上の真実が隠されていたのかもしれません。つまり、一通りの教育を受けることを終了し、社会に出て、20代のうちに結婚して、30代前に妊娠・出産というのが、生物学上もうまくいく可能性が高いという事実です。妊娠を希望する20代の方は、まず避妊を止めて自然に任せてみましょう。およそ8090%の方が1年以内に妊娠すると予想されます。タイミング法を念頭に置いて1年を経過しても妊娠しない場合には、ご夫婦そろって専門医に診てもらいましょう。

30代は、21世紀のライフスタイルに密着した多くの女性の「希望的」妊娠適齢期ですが、生物学上の適齢期としては、ちょっと怪しくなってくる時期です。
統計によると、およそ32才頃までは、だいたい安定した高い妊娠の可能性が認められています。しかし、その後は、年齢とともに徐々に「妊娠力」が低下していきます。およそ35才頃から、卵子の老化に伴い、卵子そのものに染色体異常が起こる可能性が上昇し、ダウン症児の出産率が上がっていきます。ダウン症児を立派に育て上げて居るご家庭は沢山ありますが、妊娠中の女性は、やはりこの可能性について心配するのもまた現実です。そして、37才頃から妊娠率は急降下を始め、40代に入ると妊娠率が極めて低くなっていく、というのが現実です。妊娠率が急降下を始めると同時に、折角妊娠しても流産に終わるケースが増えていきます。自己卵子による「妊娠適齢期」として、そして生殖補助医療(不妊治療)になるべくお世話にならずに妊娠・出産をするには、できれば35才までを考えたいところです。
35歳以上の初産は、「高齢出産」ということでリスクが高くなる妊娠とみなされています。35才を超えたからといって即不妊治療が必要という意味ではありませんが、35才を超えたら単に自然にまかせるということではなく、妊娠するという目的に向かって、より積極的な手段を考慮すべきです。35才頃から卵子の染色体異常が認められる確率が高くなってきますが、染色体異常が起こっている卵子の数が増えてくると、受精しない、あるいは受精しても受精卵が子宮内に着床(妊娠成立)できない、あるいは着床しても早期流産になる、といったことが起こる確率が高くなります。
治療の有無に関わらず、結果を出したい、つまり妊娠して出産する、という目的を果たすのであれば、一般的には30代まで、つまり40代に入る前までが適切といえます。30代前半の場合は、避妊を止め、まずはタイミング法を念頭において、自然にまかせてみましょう。1年経っても妊娠しない場合は、ご主人と共に専門医へ行くことをお勧めします。35才以上の場合は、1年以内であっても思い立ったらすぐに専門医へ行きましょう。37才以上の方は、積極的なタイミング法の開始と同時に専門医に相談すべきです。妊娠率が急降下し始める37才からは、妊娠に向けての正念場となります。30代後半になると、婦人病が発生することがあります。子宮内膜症の症状が進んでしまったり、子宮筋腫ができていたりするケースもあります。そのような場合は、それらが不妊の原因になってしまうことも多々あります。また初産年齢が高い女性の場合、乳がんの発生リスクなども高くなるといわれています。この時期になったら、不妊治療は開始しなくても、婦人科検診を少なくとも年1回受信して下さい。理想的には、20代の頃から年に1回婦人科検診を受けるのがお薦めですが、この時期からでも遅くはありません。

40代は、生物学上はかなり厳しいので適齢期とはいえませんが、場合によってはまだ間に合うかもしれない「社会的」適齢期です。
つまり精神的にも経済的にも安定という意味からだけみると、最高かもしれません。卵子の老化によって、妊娠率が極めて低くなるだけではなく、妊娠しても初期流産の可能性やダウン症児の妊娠の可能性が高まります。不妊治療を必要とした女性については、米国では別の統計があり、その場合、満45才での妊娠率はほぼ0%になることが分かっています。そのため、米国のほとんどの生殖医療クリニックでは、その女性本人の卵子による体外受精治療は、基本的には満45才で締め切られているのが現実です。もちろん例外はありますし、すべての女性に当てはまるわけではありません。さらに、自己卵子による体外受精でも、現在の受精卵凍結技術の発達により、より年齢が若いうちに体外受精・凍結した受精卵にて、45才を超えて妊娠する女性はもちろんいます。自然な妊娠というのは、40代では大変厳しい状態になるため、40代に入ってから妊娠を望む女性については、「自然にまかせて妊娠を待つ」のでは、子供を授かる可能性を逃してしまうかもしれません。一般的にいわれている、「1年自然にまかせてみて、ダメだったら治療を」という考えは、40代に入るともう当てはまりません。ですから、かなり積極的な生殖補助医療が一般的に勧められています。子供が是非とも欲しいと考えるなら、すぐにでもご主人と共に専門医に行くことをお勧めします。結果的に異常なし、という診断が出ても、自然周期での妊娠率が、個人差はあるものの40代に入ると515%と推定されているため、医師による専門的所見を受けるのが肝要です。「問題なし」という結果が出ていても、卵巣機能の低下は現実として起こっているので、積極的な取り組みが必要なのです。40代になると、かなり早い段階で体外受精が勧められるケースが多いのですが、すぐに体外受精に踏み切れない場合でも、例えば「人工授精を23回行ってもダメなら体外受精」といった形で積極的にステップアップして行き、とにかく残された時間を有効に使ことが肝要です。40代になったら「自然」ということにこだわっていると、自己卵子による妊娠がまったく可能ではなくなってしまうことがあります。妊娠率が515%という数字は、生理が順調な女性でも年間に12回程度しかチャンスがないことを考えると、非常に厳しいことがお分かりいただけるかと思います。 しかも流産率は50%にも上っており、チャンスを待っているうちにも卵巣機能は衰えて行き、確実に確率は下がってゆきます。繰り返し述べていますが、40代での妊娠の可能性は、個人差があり、チャンスが無いわけではありません。しかしチャンスを逃すリスクが高くなってくるので、まずは専門医の診断を受けることをお勧めします。更に、女性側に問題が無くても、パートナーの男性の数値が低い場合もあります。そういった場合、良い状態の精子を選別して人工授精をすることだけで結果が出ることもあります。とにかく40代に入ったら、「躊躇しないで積極的に」がキーワードです。
前にも書きましたが、子宮内膜症や子宮筋腫がもともとあった女性の状態は、更に悪化している可能性もあります。子宮の老化は、卵巣ほど早く老化せず、子宮という機能だけを見ると、60代になっても十分妊娠可能な場合がありますが、それでもやはり子宮の筋層部などの状態に老化現象が現れます。 子宮腺筋症の症状が見られることもあります。 そうなると、卵巣機能の低下との両方で、妊娠への期待が厳しくなります。子宮内膜症や子宮筋腫は、自覚症状がないケースもあり、検査して初めてわかることもありますので、 早い時期での検査がもちろんお薦めです。乳がんや子宮頸がんの検診を含む婦人科検診を毎年1回受診するべきです。
また米国での治療状況を書きましたが、40代は卵子の老化が顕著になっていますので、子宮の老化がこれ以上進む前に、第三者からの卵子提供を受けての体外受精を積極的に考えるべき年代です。

50代は、第三者から卵子提供を受けての妊娠など、第三者の卵子を受け入れる気持ちと健康状態が良好ならば妊娠可能です。
社会的には、精神的にも経済的にも安定しているでしょうし、「適齢期」とはいえないものの個人的チョイスによって、まだ親となる道が残されている年齢層です。ただ、無事に出産しても、子育てに必要な体力が問題になってきます。50代に入ると、自己卵子での妊娠は不可能であると考えられています。50代のうちに閉経する女性は多く、また50代にはいる頃には、閉経していないまでも、生理が極めて不順な状態になって入り女性も多いのです。満55才までは卵子提供プログラムを受けることを認めている医療機関もありますが、治療開始前に厳しい身体検査に合格しなければ受け入れられません。高血圧や糖尿症状がある女性は基本的に不適格と判断され、循環器に問題がある場合も勿論不合格です。健康状態が極めてよく、子宮の状態にも問題が無い場合のみGOサインが出るのです。50代での妊娠は、周りの目や体力が気になってくるかもしれないので、本人のリスクに対する自覚と、強い意志、そして理解ある産科医の協力が無ければ妊娠に挑戦すべきではないでしょう。

60代では、子宮の状態が大丈夫であれば、卵子提供を受ければ技術的には妊娠可能ですが、医療上のリスクが高くなり過ぎるため、どんなに健康状態が良くても、ご自身での妊娠はお勧めできません。

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